Space Tech Accelerator株式会社(本社:東京都荒川区、代表取締役:平賀元気、以下「STA」)は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が推進する宇宙戦略基金事業の技術開発テーマ「衛星データ利用システム実装加速化事業」に対し、「現場を結ぶアジア発サステナブル調達基盤構築」を提案し、採択されました。

本事業は5年間にわたり、衛星データと現場データを統合した実装型モニタリング基盤を構築し、アジアの農業・資源サプライチェーンにおけるサステナブル調達の実現に取り組むものです。パーム油を起点に、ココナッツ、カカオ、コーヒー、ゴムなど主要な農産物・資源へ段階的に対象を広げ、生産から調達に至るサプライチェーン全体の持続可能性を支えることを目指します。

推進にあたっては、衛星データ解析、プラットフォーム基盤開発、現地実装、制度設計等の観点から、国内外の複数の企業・研究機関と連携して取り組みます。

背景

私たちが日々使うシャンプー、インスタント麺、チョコレート。これらの製品に共通する原料 ― パーム油、カカオ、天然ゴム ― の多くは東南アジアで生産されています。パーム油だけでも世界の年間生産量は約7,200万トン(2024年、米国農務省)に上り、インドネシアとマレーシアの2か国で約9割を占めます。日本は年間約70万トンを輸入し、食品・洗剤・化粧品・バイオ燃料など国民生活に不可欠な原料として利用しています。

インドネシアでは大規模プランテーション企業が生産量の約6割を占める一方、250万人以上の小規模農家が農園面積の4割超を耕作しています。しかし、小規模農家は低収量、情報格差、認証取得の困難さなど構造的な課題を抱えており、森林減少や泥炭地の劣化といった環境問題とも密接に結びついています。

こうした中、EU森林破壊防止規則(EUDR)の施行準備や、日本におけるサステナビリティ開示基準(SSBJ)によるScope3開示の段階的義務化など、国際的な規制が急速に強化されています。調達企業にとってサプライチェーン上流のリスク把握と対応は、CSRの課題から経営の喫緊課題へと変わりつつあります。

既存のモニタリングサービスの多くは欧州発で、衛星画像による「上空からの監査」が中心です。生産現場の制度や商慣習に寄り添い、農家の改善行動までを支える仕組みは、まだどこにもありません。求められているのは、宇宙からの客観データと現場の実情をつなぐ、新しい情報基盤です。

先行する第一期事業の取り組み

STAは、本事業に先立つ宇宙戦略基金第一期事業(2025年2月採択)において、インドネシア・リアウ州の農家・農協(COOP)を対象に、小規模農家支援アプリの開発と社会実験に着手しています。

第一期では、COOPの業務をデジタル化するエッジアプリケーションを開発し、現場での利用を開始しました。また、ALOS-2のSARデータを用いた農地解析に取り組み、作物の識別や成長過程の追跡に衛星データを活用する可能性を確認しています。

本事業は、この第一期で得た知見と現場との関係性を基盤に、対象となる地域・作物・技術を拡大し、本格的な社会実装へと進めるものです。

取り組み内容

本事業では、3つの技術開発を柱として、農業・資源サプライチェーン全体を支える基盤の構築に取り組みます。

1. サプライチェーン統合プラットフォームの開発

衛星データ、現場で収集されるデータ、取引情報、認証関連データを統合的に管理・分析するクラウド基盤を構築します。調達企業、政府・認証機関、プランテーション企業、農家・COOPといった多様なステークホルダーが、それぞれの立場から必要な情報にアクセスし意思決定に活用できる環境の実現を目指します。

2. 小規模農家・COOP支援アプリの社会実装

第一期で開発に着手したCOOP支援アプリを発展させ、本格的な社会実装に取り組みます。紙帳票の電子化や自動計算による業務効率化に加え、衛星データとの連携による収量予測や施肥管理といった機能の拡充を進めます。まずパーム油を対象にインドネシア国内で基盤を確立した上で、他の作物や周辺国への展開を段階的に視野に入れています。

3. 衛星データ活用の高度化

SAR・光学・ハイパースペクトル・熱赤外といった複数種の衛星データを統合的に活用し、農業・資源分野における分析精度の向上と新たなユースケースの開拓に取り組みます。

  • 作物の生産性・健全性解析:作付面積の把握、収量推定、病害の早期検知
  • 森林・土地利用のESGモニタリング:森林減少の検知やEUDR対応に向けたGHG排出量の算定
  • ハイパースペクトル衛星による植生診断:スペクトルライブラリの構築を通じた精密な健全性評価
  • 熱赤外衛星による泥炭地火災の予兆検知:「発生後の対応」から「発生前に兆候を捉える」予防型アプローチへの転換

これらの技術は、パーム油だけでなく、ゴムやカカオなど樹木作物全般のモニタリングにも応用可能であり、対象作物の拡大に伴い活用範囲を広げていく計画です。

推進体制

STAが代表機関として事業全体の設計とマネジメントを担い、衛星データ解析アルゴリズムの開発、現場パートナーとの連携、社会実装を主導します。

本事業は、国内外の多様なパートナーとの協力のもとで推進します。衛星データ解析の分野では、スカパーJSAT株式会社が熱赤外衛星データを含む各種データ解析の知見を提供し、実運用を見据えたソリューションの構築を支援します。また、インドネシアにおいては政府機関、国家認証機関であるSurveyor Indonesia、現地の大学・研究機関等と協力体制を構築しており、制度・市場・現場をつなぐ実装モデルとして事業を推進します。

今後の展開

まずインドネシアのパーム油分野で基盤を確立し、ココナッツ、カカオ、コーヒー、ゴムといった他の主要作物、さらにマレーシアやタイなど周辺国へと、段階的に対象を広げていきます。

農園単位のリスク管理にとどまらず、調達企業や金融機関、政策機関が日常的に活用できる環境リスク可視化の仕組みとして、衛星データの社会実装における新たなモデルを示してまいります。


採択概要

事業名宇宙戦略基金事業
技術開発テーマ名衛星データ利用システム実装加速化事業
技術開発課題の名称現場を結ぶアジア発サステナブル調達基盤構築
実施機関Space Tech Accelerator株式会社
研究代表者平賀 元気

代表コメント

PHOTO

平賀 元気

Space Tech Accelerator株式会社 共同創業者&代表取締役社長

「パーム油の調達課題に取り組む中で、現場に足を運ぶたびに痛感してきたことがあります。森林破壊やサステナビリティの問題は、その裏にある小規模農家の貧困や情報格差と切り離せないということです。衛星で上空から監視するだけでは、何も変わらない。必要なのは、宇宙からのデータと現場の営みをつなぎ、農家の生活向上と環境保全を同時に実現する仕組みです。本事業では5年間をかけて、パーム油から始まりアジアの農業サプライチェーン全体に広がるその基盤を、日本から世界に提示します。」


連携パートナー(一部)

スカパーJSAT

スカパーJSAT株式会社

スカパーJSATは、宇宙事業とメディア事業を両輪とする「宇宙実業社」です。アジア最大級の衛星通信事業者として、新たに10機の低軌道地球観測衛星の自社保有を決定するなど、スペースインテリジェンス事業にも注力。本事業では、熱赤外衛星データを含む各種データ解析の知見を提供し、ソリューション構築を支援します。

WEB: https://www.skyperfectjsat.space